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狂言の野村さんと十津川ジビエ姉妹の異次元コラボ始まる①



宝物プロジェクトではコラボレーションを推奨している。

事業者同士のコラボはもちろん、なんと審査員の皆さんと事業者さんのコラボも起きている。

狂言界の大御所、野村万蔵さんと奈良県十津川村の中垣さんジビエ姉妹がこれまでにない

スーパーコラボを行うことになった。


2月に開催されたジャパングランプリで、ジビエ姉妹が鹿の皮を使った着物で登場した。

ただ命を奪うだけの猟ではなく、命を頂くなら、肉はもちろん、その皮も爪も使うべきだと考え、

様々な活用法を考え、商品化しているのだ。

山の生き物の命を大切に活用しようとするその姿勢に多くの審査員が心を奪われ、

昨年度の全事業者の第3位に入ることができた。


「鹿の皮は昔は狂言でも使っておりました。

    それが今では鹿を捕まえる人も足袋に加工する人もいないので

                        狂言界の伝統が失われようとしているのです。」


会場で野村さんがそんな話をしてくださった。その話をジビエ姉妹にすると

「是非、作らせてください。」とジビエ姉妹が目を輝かせた。

狂言界の伝統を宝物事業者が復活させる一大プロジェクトが始まることになったのだ。

先日、ジビエ姉妹が、十津川村から7時間かけて東京の野村さんの稽古場にやってきた。

大きな稽古場に姉妹は心を奪われた。

そこには野村さんだけでなく、長男の万之丞さんや次男の拳之介さん、

三男の眞之介らもいらっしゃった。万之丞さんは、あの「せごどん」に天皇役で出られた人、

とても凛としていた。


野村さんが説明してくれた。


「狂言に釣狐(つりぎつね)という出し物があり、動物の激しい動きをするので、

 一生に数回しかやらないような役なんです。その釣狐で狐の役をするものがは、

 鹿皮の足袋と手袋をして演じるというのが伝統なんです。

 これをみてください。これを使ってやるんですが、

 これはもう最後の足袋と手袋なのでボロボロになってきました。

 もう年齢的にこの役ができるのも最後と思ってたんですが、

 もし足袋を作って頂けるのなら、今年、それを使って、最後の釣狐をやろうと思います。」


これは大変名誉なことである。三百年続いてきた伝統の芸能の大切なパーツを、

宝物事業者が貢献できるというのだ。


「もし私がこれを使えば、狂言界で鹿皮が復活したと話題になることでしょう。

     それによって私の息子たちはもちろん、多くの狂言師たちが、

             自分にあった鹿皮を中垣さんにお願いすることになるかもしれません。」


大変な名誉である。ジビエ姉妹は、着物を作ってもらった事業者さん経由で足袋の会社も探してきた。自分たちが命懸けで捕まえた鹿の皮を野村さんの足を包む大切な足袋にしてくれる

加工業者を探してきた。

野村さんの稽古場のすぐ後に、その足袋業者さんにもお会いしたが、

三百年続く足袋屋さんで、素晴らしい技術をお持ちであった。  

テレビ局で特集を組んで欲しいくらいにいい話であった。

どんどんと何か不思議な力に惹きつけられるように

「狂言界に鹿皮の足袋を復活させるプロジェクト」が動き出していったのであった。


「野村さん、是非、ジビエ姉妹の住む十津川に行ってみませんか?

     姉妹がどんな苦労をして鹿を捕まえているのか、それを現地で体験するのは、

                    演じる側にとっても大きな意味があると思うんですよ。」


「いいですね、行きたいですね。」


こうして野村さんと息子さんらが一緒に奈良県十津川村に行くことになったのであった。

(続く)




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